2007 広島大学・中国放送共同制作番組 広島大学テレビセミナー・ラジオセミナー

広島大学テレビセミナー2 「いま南極が熱い!地球環境のホットスポット」
聞き手:伊藤文 今年1月29日に南極の昭和基地が50周年を迎えました。50年前の「国際地球観測年」(IGY)に日本が初めて本格参加した際に昭和基地が建設されてもう50年が過ぎたことになります。IGYは19世紀に始まった地球診断イベント「国際極年」(IPY)の流れを汲むもので、人類の至宝とも言える「南極条約」の成立に重要な役割を果たしました。
今年3月、50年ぶりのIPYがスタートし、2009年3月まで世界の多くの研究機関・研究者がいっせいに南北両極の温暖化などの調査に取り組みます。広島大学は、「南極条約」が掲げる世界平和を希求する教育研究機関として、これまで多くの南極研究者を輩出し、さらにIPY中核計画のリーダーとして国際協力に貢献しています。
このテレビセミナーでは、多くの人にとって未知の世界である南極の歴史と現状を学びましょう。

<放送のご案内>
  第1回 第2回 第3回 第4回 放送時間
放送日(毎週土曜) 11月3日 11月10日 11月17日 11月24日 午前5時15分−5時45分
再放送(毎週月曜) 11月5日 11月12日 11月19日 11月26日 午前2時25分−2時55分

再々放送(木・金曜)

12月27日 12月27日 12月28日 12月28日 午前4時30分−5時30分
※放送時間が変更になることがありますのでご承知おき下さい。
第1回 地球環境のバイタルサイン(健康診断)

長沼 毅(生物圏科学研究科 准教授) 今から約1万年前に氷河期が終わって間氷期が始まりました。約5000年後に最初の文明が生まれ、さらに約5000年の歴史を経て現在に至りますが、われわれの文明は間氷期しか知りませんし、氷河期を経験したこともありません。ところが、間氷期は約1万年しか続かず、そろそろ氷河期が再来するはずです。人為的な地球温暖化で氷河期を回避できるかもしれませんが、温暖化の影響もまた甚大です。氷河期の再来か回避か、その兆候は南極にこそ先鋭的に表れます。南極半島に雨が降り、氷原ならぬ草原に遊ぶペンギンにとって温暖化は吉報なのか。急激な変化に見舞われつつある南極の現状をレポートします。

第2回 地球環境変動の証人

前杢 英明(教育学研究科 教授) プレートテクトニクス(地球内部の熱エネルギーによる大陸移動)によって、今から4100万年前に南アメリカ大陸と南極大陸の間に海峡が開き始め、その後南極を一周する海流ができたため気候的に孤立し、「冷たい南極」(新生代氷河期)が始まりました。地球全体の気候に大きな影響を与えると考えられている南極の氷床には、地球環境変動の証人として多くの科学的証拠が記録されています。また、氷床と岩盤が接する場所では、岩盤の表面にもさまざまな氷床変動の痕跡を見ることができます。人類が地球上に現れてから後の時代についての話を中心に、南極からわかる地球環境の変動史と現在の地球温暖化が氷床におよぼす影響について展望します。

第3回 南極に息吹くたくましい生命

長沼 毅(生物圏科学研究科 准教授) 4100万年前に南極を一周する海流ができたことで栄養分に富む深層水が湧昇するようになり、南氷洋は豊穣の海になりました。植物プランクトンが繁茂してオキアミの群れを養い、それをむさぼるヒゲクジラが3400万年前に現れました。クジラの進化は大陸移動のおかげだったのです。ペンギンもまたオキアミを捕食し、その糞尿や遺骸が陸上で分解して土壌のもとになります。南極大陸の土は海からできるのです。やがて、荒涼たる地にコケの群落が広がります。結氷した湖の底にはコケの塔が立ちならび、岩石や氷の中にも微生物が潜んでいます。これらのたくましい生きざまを紹介します。

第4回 永遠の浪漫大陸

鈴木 盛久(教育学研究科 教授)/長沼 毅(生物圏科学研究科 准教授)

長沼 毅(生物圏科学研究科 准教授)鈴木 盛久(教育学研究科 教授) 今年は50年ぶりの地球科学イベント「国際極年」(IPY)です。最初のIPYから125年目になる今回は地球環境と微生物が新テーマです。広島大学は、南極・北極の温暖化の影響を調べるため、MERGE(地球環境変動に対する極域微生物および生態系の応答)という国際プロジェクトを主導しています。他のSALEというプロジェクトでは、厚さ3600m以上の南極氷床の下に隠されていた湖の探査を試みています。これは表面が氷でおおわれたエウロパ(木星の第二衛星)の氷下海探査の予行演習になります。南極から宇宙へ、平和利用を希求しつつ、果てしないロマンを共有しましょう。