今回審議したのは、10月19日に放送したテレビ番組『報道ドキュメンタリー「リセット~さまよう出所者たち」です。刑務所を出ても行き場がない人々を一時的に受け入れる施設が広島市にあります。彼らと正面から向き合う支援者。
彼らはなぜ犯罪を繰り返すのか?番組では、3年間に渡る取材で、背景から見えてくる深い闇と社会を描き出しました。
【担当ディレクターの説明】
ニュースの企画で取材に行き、再犯者の割合が高いことに驚きました。出所者は怖い人との偏見がありましたが、多くの人たちは普通の人でした。なぜ、この人たちが犯罪と結びつくのかと思ったことが番組を作るきっかけです。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 地味な取材を丹念にされたということで、ディレクターに敬意を表したい。
- まっとうな仕事に就きたい、まじめにやりたいという出所者を支援出来る体制になって行くための一つの布石になる番組だった。
- タイトルが非常にピッタリだ。
- 番組で、精神障害や発達障害を抱えている人が受刑者の1割にのぼるとあったが、精神障害者イクオール刑法犯になりやすいといった誤解を与えかねない。統計的なデータを入れたほうが良かった。
- 地域生活支援センターが根幹にならなければいけないのに機能していないからNPOが支援している。なぜそうなっているのか、知りたかった。
- 出所した人、行き場のない人が全員NPOに吸収されるわけではない。なぜそうなるのか知りたかった。
- 出所者の半分近くが再犯するのは驚きの数字だった。
- 社会からいろんな事情で外れていった人々の苦しみや嘆き、自分の人生をもう一度立て直そうとする姿がよく描かれていた。
- 経済的な道が断たれると犯罪を犯すということはあると思う。日本がそういう状況になって久しいので、そこも指摘してほしかった。
- NPO法人の代表か、出所者かどちらが主人公なのかと思った。番組を見ての印象は、代表の苦労が先に出て、出所者の立ち直りが薄れてしまっていた。
- 外国の例や、識者や保護司とのからみがあると番組全体に起伏と厚みが出ると思う。
- 風の家の所在地があっても良かったのではないか?
- 今後も取材が続くのであれば、「こんな大変な人がいる」ということで終わらずに、今の制度の見直しも訴えてほしい。
【担当ディレクターの返答】
タイトルは、出所者のリセットと今の制度をリセットしなければならないとの思いを込めてつけました。
刑務所での矯正や自立支援施設に支援が行き届いていないということを描きたかったのです。
【その他】
越智委員長から、11月28日に米子で行われた「第22回JNN系列放送番組審議会近畿中四国地区協議会」の報告がありました。